テイント解析 (Taint Analysis) は、ソフトウェアセキュリティにおいて極めて重要な手法であり、汚染されたデータ (tainted data) の流れを追跡することで、ソフトウェアの脆弱性を特定することに焦点を当てています。この基本的な技術は、アプリケーション内でデータがどのように扱われているかを開発者が理解し、機密情報を保護できるようにするものです。テイント解析を活用することで、組織はデータ漏えいやインジェクション攻撃といったリスクを大幅に低減できます。
ソフトウェアシステムがますます複雑化する中で、テイント解析を理解することは開発において欠かせない要素となっています。本稿では、テイント解析の中核となる概念、動作の仕組み、そしてその応用について掘り下げて解説します。
テイント解析は、静的解析によるセキュリティテスト (Static Analysis Security Testing、略してSAST) で用いられる中核的な手法です。この手法は、特に注意すべきデータの流れをプログラム内で追跡し、不適切に扱われていないかを確認します。適切に構成されたテイント解析を開発プロセスに統合することで、開発者はセキュリティリスクを事前に防止することができるようになります。
テストや動的解析と異なり、静的テイント解析は解析対象のプログラムを実行しません。そのため、すべての実行経路を考慮することができ、堅牢なセキュリティ対策や法規制への準拠を維持するうえで欠かせない手法となっています。
テイント解析は、解析対象のプログラム内でどのデータフローを追跡し、どれを除外するかを記述した設定によって構成されます。その設定には、主に以下の3つの基本要素があります。
例:平文パスワードの保存を検出するテイント解析
テイント解析は通常、解析対象のプログラムを表す1つまたは複数のグラフ構造を構築します。これにより、テイントチェックの問題はグラフ到達可能性の問題として効率的に解けるようになります。このグラフを構築するために、テイント解析ではコールグラフ (Call Graph) やポインタ解析 (Pointer Analysis) といった補助的な解析が必要です。
ただし、静的解析によって構築されるグラフは常にプログラムの近似表現に過ぎません。なぜなら、任意のプログラムが実行時に機密データをシンクに渡すかどうかを厳密に判定することは一般に決定不能だからです。したがって、誤検知 (False Positive) や検出漏れ (False Negative) を完全に排除することはできません。誤検知を減らすことは望ましいものの、より精密な近似を行うには高い計算コストが必要になります。
テイント解析によって検出できる代表的な脆弱性には、以下のようなものがあります。
テイント解析は、潜在的なセキュリティ問題を検出するために2つの方向から利用できます。
Axivion がその課題をサポートします。Axivion 静的コード解析は、MISRA、CERT、AUTOSAR、CWE などの大部分をカバーするすぐに使える解析ルールを備えており、その多くはテイント解析を利用して詳細な検出結果を提供します。
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