2021年と2022年におススメの組み込み関連カンファレンス

組み込みソフトウェアエンジニアにとって、カンファレンスは知識を習得し、新たな人脈を築く貴重な機会です。長年にわたり組み込みエンジニアとして働いてきた私自身、数々のカンファレンスに参加してきました。今年と来年に参加するべき、おすすめのカンファレンスを専門家のコメントと共にご紹介します。

本稿のトピック:

2021年開催の組み込み開発がメインテーマのカンファレンス
2021年開催の組み込み開発も扱うカンファレンス
2022年開催の組み込み開発がメインテーマのカンファレンス

2021年開催の組み込み開発がテーマのカンファレンス

2021年の組み込み開発がテーマのカンファレンスの多くが、フルオンラインまたは一部をオンラインで開催する予定です。もちろん、リアル開催のイベントを計画している団体も少数ながらあります。2021年の注目するべきカンファレンスの詳細と、その内容に関する専門家によるおすすめポイントを以下にまとめました。

2021年開催のオンラインカンファレンス

 

Embedded Online Conference (EOC) 2021は、 著名な組み込みシステムエンジニア、著者、講演者であり、初期の組み込みシステムを複数開発したことでも知られるジャック・ガンスル氏(Jack Ganssle) がメインスピーカーを務めます。また、2021年2月に火星着陸を果たした火星探査ローバー「パーサヴィアランス」のフライトソフトウェア・テクニカルリード、スティーヴ・スキャンドール氏(Steve Scandore)も登壇予定です。そのほかにも数多くのエキスパートが登壇する予定です。

「EOCは、以前のEmbedded Systems ConferenceやEmbedded Worldに匹敵するテクニカルプログラムとなるだろう」とガンスル氏は述べています。

1997年から無料のニュースレター「Embedded Muse」を発行しているガンスル氏は、今回のEOCで注目しているスピーカーについて以下のようにコメントしています。

  • スティーヴ・スキャンドール氏の火星探査ローバー「パーサヴィアランス」は、組み込みエンジニアリングの偉業だ。「パーサヴィアランス」のデザインについて話を聞くのが待ちきれない。
  • ヨハン・クラフト氏(Johan Kraft)とジェイコブ・ベニンゴ氏(Jacob Beningo)による、RTOS(リアルタイムOS)のベストプラクティスに関する講演にも注目している。RTOSを使ったシステムの失敗例、バグの再現が難しい事例は非常に多い。
  • コリン・オフリン氏(Colin O'Flynn)による、現実的なセキュリティ脅威に関する講演は、セキュアなシステム構築のために開発者が取るべき措置について、極めて実践的なヒントを与えてくれそうだ。
  • コリン・ウォールズ氏(Colin Walls)は、非常に大きな問題となっているテストについて、ジェームズ・グレニング氏(James Grenning)は、実践的なワークショップでテストドリブン型開発について、それぞれ話すそうで楽しみだ。
  • ジーン・ラブロス氏(Jean Labrosse)の講演テーマである「メモリ保護ユニット」には、フォールトトレラントなアプリケーション開発に適したアプローチとして以前から関心がある。
  • ヘンク・ミュラー氏(Henk Muller)の講演テーマは「予測可能なリアルタイムシステムの構築」。非常に難しい課題であるため、組み込みエンジニアも軽視しがちだが、実現できなければシステムの信頼度もわからない。

ブレント・ホーリン博士(Brent Horine, Ph.D.)は、航空宇宙・防衛業界およびライフライン業界に顧客を持つエンタープライズAI企業「ハイパージャイアント(Hypergiant)」のシニア組み込みソフトウェア開発者です。同氏は今回のEOCについて、「業界の多くの著名人が、組み込みエンジニアリングのハウツーについて素晴らしい講演を予定している。難易度の高くないトピックは、駆け出しのエンジニアがスキルを磨くのに最適だろう」と述べています。

著者、講演者、組み込みソフトウェアコンサルタントのジェイコブ・ベニンゴ氏(Jacob Beningoは、EOCの共同創始者でもあります。「どのセッションも、今日の開発者に必要な独自の視点とスキルをもたらしてくれるだろう」と同氏は述べています。

EOCの参加費は$290(約3万2000円)です。

2021年開催のその他の注目するべきカンファレンス:

  • QtのDEV/DES DAYS 2021は、5月18~21日に開催のバーチャルカンファレンスです。さまざまなスピーカーが、ユーザーインターフェース(UI)やソフトウェア開発のベストプラクティスについて語ります。ホーリン氏は本カンファレンスについて、「設計と開発を統合し、プロセスについて語る、優れたアプローチだ」と評しています。
  • 2021 Embedded Vision Summit(EVS)は5月25~28日に開催のバーチャルカンファレンスで、多種多様な製品のコンピュータビジョンおよび人工知能(AI)のイノベーションに焦点を当てます。「最近は組み込みシステムの多くが画像処理を行っている。もちろんこれは、AIにも関わってくるテーマだ。多数の製品の紹介やデモを通じて技術とビジネスの視点から学ぶことができるだろう。組み込みエコシステムにとって、またとない機会だ」とホーリン氏は述べています。
  • 2021 Embedded Linux Conferenceは、組み込み製品にLinuxを使う企業や開発者向けのプレミアイベントです。2021年初めにアイルランドの首都ダブリンで予定されていたオンラインとリアル開催のハイブリッドイベントが変更/延期され、9月27~30日に米ワシントン州シアトルで開催の運びとなりました。
  • Embedded Systems Weekは10月10~15日に開催のバーチャルイベントです。International Symposium on Networks-on-Chip(NOCS)と次の3つのカンファレンスが同時開催されます:
    International Conference on Compilers, Architectures, and Synthesis for Embedded Systems (CASES)、
    International Conference on Hardware/Software Codesign and System Synthesis (CODES+ISSS)、
    ACM SIGBED International Conference on Embedded Software (EMSOFT)。


「研究者のほか、組み込み開発者向けのデバイスやツールを開発している人に最適なイベントだ。このイベントでまず業界を概観し、本リストで紹介する他のイベントでさらに学んでいけるだろう」とホーリン氏は述べています。

2021年開催の組み込みシステム開発も扱うカンファレンス

Drive World + Embedded Systems Conferenceは米カリフォルニア州サンノゼで8月16~18日に開催されるリアル開催イベントで、組み込みシステムとIoTがテーマです。

2021年開催の組み込み関連カンファレンス一覧表をダウンロード

2022年開催の組み込み開発がテーマのカンファレンス

2022年開催の組み込み関連カンファレンスの多くが、すでにリアル開催イベントとして予定されています。中でも最も重要なのが、3月のEmbedded World Conferenceです。ほかにも、注目するべきカンファレンスが1年を通して多数開催される見通しです。

  • Embedded World Conference:1年の中断(2021年はオンライン開催)を経て、人気のイベントが2022年3月15~17日にドイツのニュルンベルクで開かれます。

    「例年3万5000人が参加する巨大イベントだ。エンジニアなら少なくとも各年で参加するべきだろう」とガンスル氏は述べています。

    ホーリン氏も同調し、次のようにコメントしています。「見本市的な形式で多くのベンダーが自社製品を紹介するので、組み込みエンジニアにとっては市場参入の良い機会になる。研究者としての立場からみると、このイベントはパスして別のイベントに参加するだろう。だがエンジニアとしての立場から言うと、このイベントは開発と市場参入の過程や手続きについての知識を確実にアップデートする、絶好のチャンスになる。このイベントでは、チームの生産性を上げるのに役立つ、最新ツールについても学べると思う」

    2021年のカンファレンス動画やその他の資料は、Embedded World Conferenceのウェブサイトでご覧いただけます。
  • The Embedded Technology Convention USA:ラスベガスで6月8~9日に開催されます。車載組み込みシステムやチップ&センサーテクノロジー、人工知能(AI)、ディープラーニング、クラウドコネクティビティ、組み込みセキュリティといった領域における、最新情報や研究成果を紹介するイベントです。
  • The International Conference on Embedded Wireless Systems and Networks:毎年開催の本フォーラムは、ネットワーク化組み込みシステムに関する研究成果を紹介するものです。ワイヤレスセンサーネットワークやモノのインターネット(IoT)といった分野の研究成果を知ることができます。オーストリアはリンツで10月3~5日に開催予定です。
  • UKEmbedded:2021年のイベントが延期され、2022年5月12日に英国コヴェントリーで開催される運びとなりました。参加費は無料で、英国における組み込みエンジニアリング分野の最新知識や進展を学ぶことができます。

2022年開催の組み込み関連カンファレンス一覧表をダウンロード

組み込みエンジニアにとって、カンファレンスは学習とネットワーク作りの基盤となるものです

組み込みエンジニアは、組み込みソフトウェア開発に関する技術や知識を絶えずアップデートしなければなりません。カンファレンスは組み込みエンジニアにとって、最新のテクノロジーを学び、エンジニアリング能力を継続的に磨き続けるうえで効果的です。


ガンスル氏は以下のように述べています。「エンジニアにとって、カンファレンスは非常に重要だ。エンジニアは目下のプロジェクトに集中するあまり、新しい手法を学ぶことをおろそかにしてしまう。カンファレンスは昔から、多くの出展者が参加する見本市と、技術的プログラムの両方を同時に提供してくれる場だった。見本市としての側面からは、新製品をその場で実体験する良い機会が得られる。技術的プログラムの側面からは、関心のあるテーマを深く掘り下げて学ぶことが可能だ」

Qt World Summit 2021 について

組み込みエンジニアの皆様はぜひ、11月に開催されるQt World Summit 2021にもご参加ください。本サミットは、Qtとそのエコシステムを支える組み込み業界のソートリーダーと出会い、彼らから学ぶ素晴らしい機会です。プレゼンターとしてイベントに参加する方法はこちらでご紹介しています。エンジニアの皆様は、2020 Qt World Summit Onlineのすべての基調講演やテックトーク、インタラクティブQ&Aもご覧いただけます。

本稿でご紹介していないカンファレンスをご存じの方はぜひ、情報をお寄せください。また、ご紹介したイベントに参加された方は、ご感想をお聞かせください。