レガシー SCADA アプリを近代化するには?

本稿は「How to Modernize Legacy SCADA Apps」の抄訳です。 

業界動向ブログシリーズ

 

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Michele Rossi

Director, Industry

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Amit Nainawat

Director, Solutions Engineering, EMEA

 

旧式の技術に依存した、安全性が求められる産業機器を本当に信頼できますか?

現在、多くのSCADA(監視制御およびデータ収集)システムが、.NET や MFC などのレガシー技術に依存しており、産業オートメーション分野におけるシステムの近代化は喫緊の課題です。24時間365日稼働する製造現場において、業務を止めることなく、安全かつ確実にこれらのシステムを最新のテクノロジーへと移行することが、今まさに求められています。

 

SCADA システム近代化の緊急性

1960年代にSCADAという概念が登場して以来、産業界は複雑なプロセスをより効率的に監視・制御するために技術を活用してきました。現在では、労働者の期待の変化、厳格化するサイバーセキュリティ規制、そして高まるビジネスリスクが重なり、SCADA システムの近代化は最優先の課題となっています。

  • 従業員の期待の変化: 現場監督からラインオペレーターに至るまで、技術者は日常的にスマートフォンのような洗練されたデジタル体験に慣れており、工場内のシステムにも同様の操作性とユーザー体験を求めています。

  • サイバーセキュリティ規制への対応: 旧式のシステムでは、もはや現在のセキュリティ要件に対応できません。生産設備をサイバー脅威から守り、最新の規制に準拠し続けるためには、SCADA システム自体のセキュリティ対策の強化が不可欠です。

  • 経済的リスクの高まり:サイバーセキュリティ規制を満たしていない場合、多額の罰金を科されるリスクがあります。さらに、老朽化したシステムが障害を起こせば、SCADA 全体の停止や生産の遅延といった甚大な損失につながる可能性もあります。

工場の運転や監視を30年前のソフトウェアに依存し続けることは、極めて大きな経済的リスクです。多くの工場オーナーは、操業を止めることなく、このリスクを解消しようとしています。

SCADA アプリを近代化するための 5 つのベストプラクティス

ダウンタイムや業務への影響を最小限に抑えるためには、レガシーな産業用アプリケーションからモダンなアーキテクチャへの移行は、全面的な再構築ではなく、段階的かつモジュール単位で進めることが重要です。以下は、SCADA 開発者が取り組むべき 5 つのベストプラクティスです:

  1. 段階的なアップデートを実施する:システム障害のリスクを抑えるには、変更を一度に行うのではなく、段階的に導入することが重要です。たとえば、旧式の技術に単にモダンなUIを被せるのではなく、バックエンド構成からUI更新までを含む全体的なアーキテクチャの刷新を、1ページや1モジュール単位で徐々に進めることを検討してください。

  2. スケーラビリティを確保する:将来的な拡張性を見据え、幅広いハードウェアサイズや用途に対応できるシステム設計が求められます。たとえば、大型機械向けのワイドスクリーン操作パネルから、モバイルサイズの画面まで対応できるよう、最小限のコード変更でスケール可能なソフトウェアフレームワークを選定しましょう。

  3. システム統合のしやすさを高める:システムインテグレーターが自社のソフトウェアを扱いやすくすることも重要です。たとえば、初期導入や設定作業を効率化するツールの提供や、複数のモニター対応や画面上の特定領域へのリモートログインを可能にするウィジェットの追加などが効果的です。

  4. 長期的に信頼できるパートナーと連携する:頻繁に製品をアップデートし、変化する市場ニーズに対応できる信頼性の高いパートナーと協業することが、近代化の成功には不可欠です。たとえば、すべてのリリースが後方互換性を保ち、長期サポート(LTS)を提供するパートナーを選びましょう。

  5. テストの自動化を導入する:手動テストから脱却し、不具合やエラーを自動的に検出することで、製品の安全性を高めつつ、コストを削減し、アップデートのスピードを加速できます。たとえば、ABB社では GUI テスト自動化ツール「Squish」を活用し、高い品質と安全性を確保しています。

 

モジュール単位でのアップデートは、短期間で成果を得られる効果的なアプローチです。従来のUIを完全に置き換えるのではなく、新しいUIを一層ずつ重ねていく方法であれば、機器やドライバーの変更は不要です。プロセスを中断することなく導入できるため、運用への影響を最小限に抑えつつ、変化するサイバーセキュリティ規制への対応も容易になります。

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Qt で SCADA システムを近代化

Qt フレームワークの強力なクロスプラットフォーム対応により、レガシーな SCADA システムからモダンなシステムへの移行を、業務を止めることなくスムーズに実現できます。シンプルな構造、再利用性の高い設計、そして充実したサポート体制が、効率的かつ確実な近代化を支援します。

  • 使いやすさ:Qt は、Linux、Android、Web アプリケーションなど複数のプラットフォームに共通したシンプルな API と統一された開発手法を提供します。Qt は基盤となるシステムを抽象化することで、ハードウェアやOSごとにコードを適応させる煩雑さを排除し、開発者が低レベルの処理ではなく、操作性やビジュアルといった付加価値の高い機能に集中できる環境を実現します。

  • 再利用性:Qt を使用すれば、UI設計は画面サイズに依存せず、同じコードをさまざまな製品やプロセス(例:ハンディターミナルなど)に再利用可能です。ハードウェアやフォームファクタが異なっていても、Qt のクロスプラットフォーム機能とアダプティブレイアウトにより、表示環境に最適化された UI を提供できます。これは、依然として続く半導体不足の状況において特に大きな利点です。

  • 幅広いサポート:Qt は多様なハードウェアおよびソフトウェアプラットフォームへの対応だけでなく、マイクロコントローラー、マイクロプロセッサ、RTOS など、組込み開発に必要な要素にも対応しています。これにより、産業用デバイスの多様な要件を、単一のコードベースで柔軟に扱うことが可能になります。

With its powerful graphics capabilities and ready-made security features, Qt is a great fit for SCADA producers, system integrators, and factory owners to leverage value across a range of use cases.

さらに、Qt にはソフトウェア開発ライフサイクルの各段階――デザインからコードへの変換、実装、テスト、デプロイまで――に特化したツール群が揃っており、すべてが共通の開発基盤上で連携します。これにより、部門横断的なコラボレーションが円滑になり、OEM はソフトウェア全体の主導権を社内に取り戻し、外部サプライヤーへの依存を大幅に低減することが可能になります。

導入事例:
ある Qt Group の顧客企業では、超音波溶接プロセスが生産工程の中核を担っています。同社の溶接機の UI は .NET フレームワーク上で構築されていましたが、Qt を活用して旧システムの上に新しい UI を被せる形で近代化を実施しました。システム全体を一から置き換えるのではなく、既存の基盤を活かしながらモダンなUIを構築したことで、システム破損のリスクを回避しつつ、安全かつ効率的にアップグレードを実現しています。

Qt Group: SCADA システム設計のゴールドスタンダード

Qt Group は30年以上にわたり、世界をリードするOEM各社の最先端SCADAシステム開発を支援してきました。私たちのソフトウェアは、現在世界中で数十億台のデバイスを支えています。また、Qt フレームワークは 70 を超える業種で活用され、産業ソフトウェアにおける事実上のスタンダードとして高く評価されています。

レガシーSCADAシステムの再設計やアップデートをご検討中の方は、ぜひ当社のデモページをご覧ください。

今すぐ Qt 製品をご覧いただくか、オンラインでお試しいただくことも可能です。安全性と将来性を兼ね備えた産業ソリューションを共に実現するために、ぜひお気軽にご相談ください。

産業オートメーション分野における Qt の詳細はこちらをご覧ください。

 


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