Qt Project

この記事は Qt Blog の "Qt Project" を翻訳したものです。
執筆: Lars Knoll, 2011年9月12日

我々は昨年から Qt をより広くオープンに開発する方法をみなさんと議論し、共に進めてきました。様々な検討を経て、新しいソリューションの準備がほぼ整いました。

当初の想定よりも幾分時間がかかりましたが、今後 Qt は新しいドメイン qt-project.org にてホストされることになり、そのための移管作業もまもなく完了します。このドメインは Qt Project のインフラをホストするためだけの非営利財団に属します。これまでに Qt の開発に興味や関心のある企業や、オープンソースプロジェクトなどの関係者からの様々なフィードバックを集めてきました。これらのみなさんがこの最終的な形を受け入れ、そしてもちろん、このプロジェクトに参加してもらえることを望んでいます。すべてのみなさんのすべての要求を満たすことはできませんが、良いソリューションを提供できると思っています。

インフラについて

プロジェクトの立ち上げの時点では、ウェブサイト、Wiki、メーリングリスト、リポジトリ、Qt への変更をレビューしマージするための仕組みを用意します。マージの仕組みは git 向けのオープンソースのコードレビューシステム gerrit をベースにしたもので、Nokia が Qt のために動かしている継続的インテグレーション(CI)システムとの連携に対応しました。この CI システムでは、我々にとって重要なプラットフォーム上でのデグレードテストが自動化されています。今後の目標はその他の新たなプラットフォームの移植へも対応できるようにすることです。

バグトラッキングツールは今まで通り Jira を使い続ける予定です。現在の Jira サーバーを非営利財団の方に移管する予定ですが、これはプロジェクトの公開の後になるでしょう。bugreports.qt.nokia.com は bugreports.qt-project.org にて運用される予定です。また Qt の開発に関連するメーリングリストも qt-project.org 上で運営する予定です。

財団の役割と意思決定

どのような形であれ、この財団がプロジェクトの舵取りをすることはない、ということを明言しておきます。この財団はプロジェクトのホストとインフラの管理に関わるコストの管理のためだけに存在します。プロジェクトの方向性やすべての技術的な意思決定は、貢献者や承認者、メンテナからなるコミュニティに委ねられます。これにより、例えば Nokia で働いている Qt の開発者も、アップストリームプロジェクトとしての Qt の開発に参加することになります。メーリングリストや IRC なども含め、すべての開発者が同じインフラを使うことになります。

Qt Project が採用する予定のガバナンスモデルについては、以前に Thiago が記事を書きました。様々なフィードバックを元に モデル を若干改良しましたが、以前のものとほとんど同じです。現在はこのプロジェクトの今の状況を元に、メンテナと承認者の一覧の作成を行っているところです。ほとんどが Nokia から選ばれる形にはなるのは自然な流れですが、それでも初期メンテナの 15% 程度が Nokia 以外で働いているということに驚かれるかもしれません。また、他の企業やコミュニティからの承認者も多くなるでしょう。Nokia は次の十億人の Nokia ユーザーにアプリを届けるために、今後も Qt へのさらなる投資を続けますが、より多くの人々がこのプロジェクトに参加し、承認者とメンテナの裾野が広がっていくことを私は強く望んでいます。

最後に、このプロジェクトに付随する、今後も無くならないものの話をしたいと思います。Qt に貢献するには、Nokia との間の「貢献のためのライセンス合意書」にサインをする必要があります。我々は Qt のコードを法的に明確でクリーンにするために多くの時間や手間を割いてきており、この配慮は Qt Project の元でも継続されます。我々は数ヶ月に渡って多くの関係者とこの合意書のレビューを行っており、Qt への貢献を望むすべての企業や個人に対して、この合意書は可能な限りの包括的なソリューションであると信じています。この合意書では Qt を取り巻く商用のエコシステムに対しても成長の継続とプロジェクトへの貢献が可能になっています。それから Trolltech や Nokia からの数多くの考慮すべき法的な義務も存在します。

オープン化の軌跡、そして...

何年も前にはじめたこの旅が、新たな段階に入ったことに私は胸を踊らせています。私が 2000 年に Trolltech に入った時点では、Qt は X11 上で QPL として提供されていました。この年に我々は Qt/X11 のライセンスを GPL v2 に変更しました。2003 年には Mac 版の GPL での提供を開始しました。そして 2005 年にリリースした 4.0 では、すべてのプラットフォームにおいて GPL での提供を開始しました。その後 GPL v3 を選択肢として追加し、2009 年には Nokia のもとで、すべての Qt を LGPL 2.1 でも提供することにしました。

2010 年の 7 月にアナウンスしたように、開発をさらにオープンにすることは次の必然的なステップであり、これがまもなく実現します。オープンソースのコミュニティから来た一人として、さらに Qt の商用のコミュニティからの素晴らしい貢献を経験した一人として、このプロジェクトは本当に実現したかったことであり、Trolltech と Nokia の中でこれまで努力を続けてきたことでもあります。

というわけで、オープンガバナンスがまもなく実現します。Qt の未来を、すべてのみなさんと一緒に創造していくことを心から楽しみにしています。ここに至るまではとても長い道のりでしたが、個人的にこれからが本当のスタートだと信じています。

Qt Project は非常に見通しの良い、能力主義のオープンなガバナンスモデルのうちの1つになると信じています。プロジェクトの開始は Qt Developer Days の時期に合わせ、遅くとも10月17日を予定しています。

Daniel の記事 も合わせてご覧ください。


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