Qt for MCUs 2.12.3 LTSがリリースされ、ダウンロードできるようになりました。今回のパッチリリースでは、Qt for MCUs 2.12とのソース互換性を維持しながら、複数のバグ修正やその他の改善が行われています(「Qt for MCUs 2.12 LTS released」も参照してください)。今回のパッチリリースは、安定性とユーザーワークフローに重点を置いたもので、新しい機能は追加されていません。ここでは、今回導入された改善点の主なものをご紹介します。変更点の完全な一覧はこちらで確認できます。
ZephyrエコシステムとのQt for MCUsの統合をさらに強化
今回の歓迎すべき改善の一つとして、Qt for MCUsをZephyrのビルド環境におけるwestビルドシステムへ、より簡単に統合できるようになりました。Zephyr west moduleをサポートしたことで、Qt for MCUsをZephyrベースのプロジェクトへ統合することが大幅に容易になっています。Qt for MCUsを標準的なwest moduleとして追加し、Zephyrエコシステム内で直接ビルドできるため、ユーザーはプロジェクト全体で単一のビルドシステムを利用できます。
Zephyrユーザーにとって、これは次のようなメリットにつながります
- 統合の簡素化: Qt for MCUsが通常のZephyrワークスペースの一部となるため、セットアップの手間とプロジェクトの複雑さを軽減できます。
- ビルドワークフロー: ユーザーは、使い慣れたwestコマンドを使って、アプリケーションの取得、設定、ビルドを行えます。
- 依存関係の管理が容易に: Qt for MCUsのソース、プラットフォームサポート、アプリケーションコードを、他のZephyrモジュールと並行して管理できます。
- プロジェクト導入の迅速化: すでにZephyrを利用しているユーザーは、別のビルド環境を新たに学習することなく、Qt for MCUsをすぐに導入できます。
開発フローについて詳しくは、Zephyr Integrationのドキュメントをご覧ください。
プラットフォームのアップデート
今回、Qt for MCUsでテストおよび検証済みとなった3つの新しいプラットフォームを発表します。
- Nuvoton Gerda 4UL は、Tier-2デバイスとしてオンラインインストーラーから利用できるようになりました。つまり、このプラットフォームをすぐに使い始められるよう、Qt Creatorとの統合環境がすぐに利用できます。いくつかの安定性に関する修正も導入されています。今後のリリースでも、Nuvoton Gerda 4Lおよび4ULの両プラットフォームについて、引き続き改善を行っていきます。
- Ambiq Apollo 510 についても、最新のQt for MCUsポートが利用可能になりました。これにより、超低消費電力デバイス上で滑らかなグラフィックスを実現できます。
- NXP i.MX95 (M7 Core) 向けに刷新されたポートが、2.12バージョンで利用可能になりました。このポートは、一般公開されているNXP SDKを使用してテストされています。これにより、QtとQt for MCUsのフレームワークを、明確に分離されたドメインを持つハイブリッドアーキテクチャ上で共存させることができます。複雑な安全性要件を管理するためにハイパーバイザーを必要としません。
上記のデモでは、Qt 6.12とQt for MCUs 2.12が、物理的に分離されたコアを持つ同一のSoC上でシームレスに動作する様子を紹介しています。安全性を担うMCU側のコア(Cortex-M7)では、Qt for MCUsが安全なグラフィックスを描画します。これはAUTOSAR Classicのような安全認証済み環境上で動作します。一方、アプリケーション側のコア(Cortex-A55)では、LinuxまたはAndroid上でQt Quick 3Dを使用し、3D処理やその他のCPU負荷の高いタスクを処理します。アプリケーション側のコアで障害が発生しても、安全性を担うコアには影響しません。そのため、安全性を担うコアは、画面左側に重要な情報を表示し続けることができます。
このアーキテクチャにより、お客様はQtを使って、マイクロモビリティや自動車向けの次世代インストルメントクラスターを、エンドツーエンドで開発できるようになります。
FigmaからQt for MCUsへ
Qt Groupが提供する人気のFigmaプラグインがQt for MCUsにも拡張され、正式に提供開始されました。プラグインのバージョン1.1以降でサポートされています。これは私たちにとって大きなマイルストーンです。Figma上で生まれたアイデアを、リソースに制約のあるデバイス上で実際に動作するアプリケーションへ、シームレスに移行できるようになるためです。このリリースについて詳しくは、公式の製品リリースブログをご覧ください。
Squishのオブジェクト認識機能による自動テストの強化
2.12.3では、11月にSquish 9.3とともに予定されている「Squish for MCUs Object awareness」機能の導入に向けた基盤を構築しました。これにより、オブジェクトベースのテスト機能を利用して、MCUアプリケーションの自動テストに機能的な正確性(Functional accuracy)という側面を加えられるようになります。デバイスリンクのサポートとGDBシンボルが利用可能になれば、記録、再生、スクリプトによるオブジェクト名の指定、BDDなどを完全にサポートできます。今後のさらなるアップデートにもご期待ください。
2.11および2.12のライフサイクルに関するアップデート
昨年の2.11リリース時にお知らせしたロードマップのアップデートに続き、改めてお知らせします。2.11 LTSは、2027年初頭にサポート終了(End of Life)を迎える予定です。その一方で、私たちは2.12および今後の3.xシリーズの開発を継続しています。

現在、次期メジャーリリースに向けた包括的な計画を策定しています。その中で、現在の2.12 LTSのライフスパンを2028年初頭まで延長することを決定しました。これにより、2.xを利用しているユーザーが、次のメジャーアップデートへの移行に向けて十分な準備期間を確保できるようになります。
次期メジャーリリースでは、よりCMakeを中心とした開発者ワークフローに重点を置き、AI支援ツールを改善するとともに、完全なCRA準拠を目指します。詳細については、今後のアップデートをお待ちください。
他のQt製品と同様に、Qt for MCUs 2.12.3 LTSは、既存のインストール環境に対してMaintenance Toolを使用して追加することも、Qt Online Installerを使用して新規にインストールすることもできます。
Qt for MCUs 2.12 LTSの延長されたサポート期間は、2028年2月まで継続します。その間、次のパッチリリースに向けた作業を進めています。今年開催されるQt World Summit 2026にもぜひご参加ください。Qtのロードマップや、企業としての今後の方向性について、さらに詳しい情報をお届けする予定です。