Clate ベータ版の提供を開始しました。どなたでも無料でお使いいただけます。組み込み・HMI(ヒューマンマシンインターフェース)アプリケーション向けの、ノーコードで AI ネイティブな UX デザインツールです。内部では QML が動作しており、デザイナーがユーザー体験の全体を自らコントロールできます。
デザイナーが必要としているのに、まだ名前のないツール
昨年末、Qt は組み込みデバイスに携わる 400 人以上のデザイナーにお話を伺いました。6 割が「今は持っていないツールが必要」と答えましたが、それがどのようなツールかを具体的に挙げられる方はほとんどいませんでした。私たちの経験でも、組み込み UX デザイナーは 1 つのプロジェクトを完成させるまでに平均 4 つのツールを使い、手作業でつなぎ合わせています。
市場を見渡しても、組み込み・HMI 向けの UX デザイナーの働き方に合わせて作られたツールは、見当たりません。
多くのデザインツールは Web・モバイル向けに作られており、その用途では非常に優れています。ただし、こうしたツールで作成したデザインは実際のデータと結びついておらず、ターゲットのハードウェアで何が描画できるのかも分かりません。実際に使えるコードも出力されません。ゲームエンジンは優れたビジュアルを実現できますが、GPU リソースに余裕があることが前提のため、プロジェクトの後半はメモリの確保に追われることになります。実機で動作させられる組み込み専用ツールもありますが、その多くは専用の IDE やコードエディターに閉じており、デザイナーには使いにくい環境です。
こうした状況の中で、組み込みデザインに求められる水準は上がっています。スマートフォンが、私たちが触れるあらゆる UI の基準になりつつあるためです。さらに AI によって、重視される点はスピードから品質へと移りました。すべてのデザイナーが向き合う問いは、より重みを増しています。「画面上の美しいデザインは、本当に役目を果たせるのか」。
Qt は長年にわたり開発者・エンジニア向けのツールを提供しており、現在は世界で 10 億台以上のデバイスで使われています。UI を実機で動かし、複数の製品に展開し、目的どおりに機能させるために何が必要かを、私たちは熟知しています。
Clate は、Qt を一度も使ったことのないデザイナーでも違和感なく使い始められるツールです。引き渡すのは、開発者がそのまま土台にできる、動作する QML です。
Clate とは
Clate は、実際に使われる環境のための初のデザインツールです。ビジュアルのモックアップにとどまらず、組み込み・HMI アプリケーションのユーザー体験全体をデザイナー自身が担える、1 つのツールです。
Clate は 3 つの考え方に基づいています。
- 実機を前提としたデザイン:組み込みインターフェース向けに作られています。デザインに合わせて、Qt の UI 向け宣言型言語である QML が作成されます。開発者は静的なモックアップから作り直すのではなく、引き渡されたデザインを土台に開発を進められます。
- デザイナーによる、デザイナーのためのツール:組み込み HMI プロジェクトに長年携わってきたメンバーが設計した、ノーコードツールです。最近のデザインツールをお使いの方なら、初日から違和感なく操作できます。
- ワークスペースに統合された AI:Clate は AI ネイティブです。自然言語で新しい画面やデザインの変更を指示でき、何を残すか、いつ公開するかは常に自分で決められます。
Clate ベータ版の機能
Clate ベータ版には、組み込み HMI をデザインするための基本機能が揃っており、どなたでも無料でお使いいただけます。主な機能をご紹介します。
デザイナーが使いやすい UI
ツールバーとパネルの直感的な操作で、UI 要素をゼロから作成できます。作業スペースは、共有のデザインプロジェクト空間である Infinity Canvas です。境界を気にせず自由に制作でき、広いスペースでアイデアを広げたり関連づけたりできます。
アセットは同じライブラリにアップロード・保管でき、複数のデザインファイルで共通して使えます。プロパティエディターでは、カラーピッカーやグラデーションエディターなどの機能を使って、デザインを細部までコントロールできます。
コンポーネントやアセットをインポートした場合も、インポートしたデザイン内のレイヤーを確認・調整できます。大きなコンポーネントが複雑になっても、入れ子になった要素を編集できるため、細部まで自分で管理できます。
複数のプロジェクトファイルを同時に管理・編集できます。キャンバス上でファイルの作成・編集・削除ができ、ファイル間でオブジェクトを移動することも可能です。
Clate AI アシスタント
Clateで上部バーから AI アシスタントを開き、作りたいものを好きなだけ詳しく伝えてください。要素や画面がキャンバス上またはチャット内に作成されるので、その後の調整はご自身で進められます。
利用を始めるには、ACP(Agent Client Protocol)を通じて AI サービスプロバイダーを接続します。必要なのは、既存の AI サブスクリプションだけです。ベータ版の提供開始時点では Anthropic の Claude に対応しており、今後、対応プロバイダーを順次追加する予定です。
Clate にはローカルの MCP(Model Context Protocol)サーバーも搭載されているため、普段お使いの AI エージェントを Clate に接続することもできます。
QML エクスポート
デザインの作業中、Clate は裏側でその内容を QML に対応づけています。共有の準備ができたら、コードのプレビューとファイルをエクスポートします。開発者は動作する QML を受け取り、内容を確認したうえで、PDF から仕様を読み解いて作り直すのではなく、実際に動く土台から開発を始められます。
今後の予定
ベータ版は始まりにすぎません。Clate が組み込み UX デザイナーの皆さまのニーズに応えられるよう、できるだけ多くの方々と対話を重ねていきます。
正式な商用版は 2027 年夏の提供を予定しており、それまでの間も、ベータ版ユーザーの皆さまに新機能を提供し続けます。
2026 年中に提供予定
変数とデータバインディング:実際に使われる体験には、見た目の良さだけでなく機能性も求められます。データの入力値に型と値を定義し、任意のプロパティをバインドすることで、UI をデータで動かせます。たとえばサーモスタットなら、設定範囲を 10〜35 度とし、27 度を超えたら赤に変わるようにします。スライダーをドラッグして値をシミュレーションすれば、レイアウトの問題を早い段階で見つけられます。開発者は、何を接続すべきかを、モックアップの横に書かれたメモではなく、コード上で直接確認できます。
2027 年春に提供予定
- 拡張コンポーネント:コンポーネント構造のステート・バリアント・オーバーライド
- キャンバス上での編集:繊細なグラデーションを、キャンバス上で直接、細かく調整
- デザインシステム管理:色・余白・タイポグラフィのデザイントークンと基本コンポーネントを一度定義すれば、あらゆる場所で再利用できます。広く使われているツールからのトークンのインポートも検討しています。
- アセット管理:アイコンライブラリと、さまざまなアセット形式の QML への変換
- デザインテンプレート:プロジェクトやチームで再利用できるテンプレートの作成とカスタマイズ
- 画面フローとノードグラフ:HMI プロジェクトの中でも、ドキュメント化と引き継ぎが特に難しい部分です。画面・ステート・コンポーネント・インタラクティブ要素を視覚的につなぎ、各画面遷移のきっかけをコードなしで定義できます。
- アニメーション:モーションデザイナー向けのタイムラインとカーブエディター。再生ヘッドを進めながらプロパティを動かすと、Clate がキーフレームを追加します。録画を開始してオブジェクトを操作すれば、その動きをキーフレームに変換します。開発者には、仕様を解釈し直す必要のない、実装と一致したアニメーションが届きます。
- コラボレーション:同じファイルのリアルタイム共同編集、オンラインのメンバーと編集内容の確認、キャンバスへのコメントの固定、対応が必要な相手へのメンション
- AI アシスタントの対応プロバイダーの拡大
Clate・Figma to Qt・Qt Design Studio:それぞれの使いどころ
Clate は、Qt のデザインツールの仲間に加わります。それぞれ、異なるニーズに応えます。
- Figma to Qt:Figma を使い続けたいデザイナー向けです。プラグインは Figma 内で動作し、デザインを実際の Qt インターフェースとしてプレビューできます。変換できない箇所は検知して知らせ、QML プロジェクト一式をエクスポートします。まもなく出荷する Figma プロジェクトであれば、ファイルを最も確実にデバイスへ届けられる方法です。
- Qt Design Studio:Qt Quick と QML を、開発者と並んで実際に扱うテクニカルアーティスト向けです。オートモティブのような要求の高い用途での 3D ユーザーインターフェースにも対応します。
- Clate:組み込み製品のユーザー体験全体を、実機向けに作られた専用のノーコードツールで担いたい UX デザイナー向けです。最初のスケッチから、開発者が土台にする QML まで一貫して扱えます。
Clate ベータ版を始めましょう
Clate は、さまざまな業界の HMI プロジェクトに携わる数百人の UX・ビジュアルデザイナーの皆さまとともに開発してきました。今後もベータ版ユーザーの皆さまとともに育てていきます。Clate ベータ版を無料でダウンロードして、次の組み込みプロジェクトでお試しください。課題に感じていることもぜひお聞かせください。