RESEARCH
組み込み機器のデザイン
組み込みUI/UXデザイナー 420人のインサイト
1. はじめに – 主な調査結果
1.1 組み込みデバイスに存在するUX課題はハードウェア起因ではない
現代のユーザーは、ポケットにスーパーコンピューターを持ち歩いています。スマートフォンによって、インターフェースに求められる新しい基準 – 素早く、滑らかで、直感的、そして美しい – が確立されました。
今や人々は、どんなスクリーンでもスマートフォンのような高品質な体験を求めています。プライベートでは車のダッシュボードや洗濯機のディスプレイ、仕事では医療機器や産業機械の操作パネルなど、あらゆる場面で直感的で美しいインターフェースを期待しています。
しかしその期待に応えられているとは言えません。
例えば J.D. Power の 2025 U.S. Initial Quality Study によると、インフォテインメントは新車オーナーが報告する課題の中で最も多く、車両カテゴリで最大の問題となっています。また、家電製品でも、製品の仕様と実際のインターフェースの差異は、レビューや返品率に繰り返し現れるテーマです。
問題はハードウェアにはありません。プロセッサは十分高速で、画面も鮮明です。UI/UXデザイナーは創造力とスキルを持ち、素晴らしい体験を生み出す意欲に溢れています。
ボトルネックはツールにあります。組み込みシステムのデザイナーは、WebやモバイルUI、画像編集など他分野のツールを流用し、コードやワークアラウンド、AI、そして多くの努力で不足を補っています。その過程で生じた妥協が、製品やユーザー体験にそのまま反映されてしまいます。

本レポートでは、このギャップに焦点を当てています。2025年、Qt Groupの依頼により B2B International が、世界6つの業界・3つの地域で組み込みシステム向けUI/UXデザイナー420名を対象にグローバル調査を実施しました。
調査結果から、創造性と制約、現状のツールと求めるツール、急速に進化するAIと依然として手作業中心のワークフロー———その狭間で奮闘するプロフェッショナルの姿が浮かび上がります。
1.2 調査で見えてきたポイント
10人中6人は別のデザインツールを求めている
多くのデザイナーは現在使っているツールが自分のワークフローに適していないと感じています。しかし、代替を探しているこの17%の人は、どんな新しいツールが必要なのか具体的にイメージできていません。
95% の回答者が重要課題を報告
ほとんどの回答者が、主な課題を少なくとも一つ挙げています。中でも「クリエイティブデザインとインスピレーション」「時間と優先順位」「要件とブリーフィングの明確さ」がトップ3となっています。
63% のデザイナーが既にAIをワークフローに活用
組み込みUI/UXデザイナーの多くが、日々の課題解決にAIを取り入れ始めています。しかし、現時点ではAIの導入が業界全体や職業そのものを大きく変えるほどのインパクトはまだありません。